MRIの『コントラスト第2弾』
みなさんこんにちは!
ブログ担当技師です。
このブログでは、MRI(磁気共鳴画像)に関するちょっとした豆知識や、画像に現れる不思議な現象について、可能な限りわかりやすくご紹介していきます。
前回は、MRIの「コントラスト」がどういうものか、どうコントロールされ、臨床でどう活かされるのかを簡単に解説しました。
今回のテーマ「コントラスト 第2弾」として、FLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery:フレア)についてお話していきます。
「名前は聞いたことあるけど、結局T2と何が違うの?」
「なんで脳の検査で必ず撮るの?」
そんな疑問を噛み砕いてお話していきます。
■MRIのコントラストとは?
前回はMRIの「コントラスト」の基本である T1強調画像・T2強調画像・プロトン密度強調画像について触れました。
でも、臨床の現場ではそれだけでは足りない場面がたくさんあります。単に「水が白い」「脂肪が明るい」といった基本だけではなく、ある信号をあえて消したり、分子の動きを反映させたり、磁化率の差を強調したりすることで成り立つ世界があります。
「T2強調画像で脳室の隣に病変があるはずなのに、脳脊髄液と同じ白さに埋もれてしまう…」
「脂肪の信号が邪魔で、本当に見たい炎症がわからない…」
こうした“見たいのに見えない”問題を解決するために生まれた、今回紹介する応用コントラストの一つである【FLAIR(フレア)】について少し深掘りしていきます。
このあたりに踏み込むと、MRIはただの断面画像ではなく、組織の性質そのものを映し出す装置だと実感できます。
■そもそも『FLAIR(フレア)』ってなに?
FLAIRは「Fluid Attenuated Inversion Recovery」の略称です。
呪文のように聞こえるかもしれませんが、日本語にすると「液体(Fluid)の信号を抑え込んだ(Attenuated)画像」という意味になります。
脳MRIを日常的に見る医師や放射線技師にとってはおなじみの撮像法です。
MRIの基本である「T2強調画像」は前回お話ししました。水分が白く光って見えるため、病変(むくみや炎症など、水分がたまる場所)を見つけるのにとても適しています。
しかし、水も病変もどちらも白く光ってしまい、特に脳室の近くや脳の表面(皮質)にある病変は、明るい脳脊髄液(CSF)に紛れて見えにくくなることがあります。


■Inversion Recovery(反転回復)のマジック
FLAIRは、頭部領域では一言でいえば「脳脊髄液(CSF)の信号を消したT2強調画像」です。
なぜCSFを消す必要があるのか?
通常のT2強調画像では、CSFは長いT2値を持つため非常に高信号(白く)描出されます。
これは正常な振る舞いなのですが、困る場面があります。
そこで登場するのがFLAIRです。邪魔な水(CSF)が黒く消えることで、
脳梗塞やくも膜下出血などの異常な水分だけが白いコントラストとして鮮明に浮かび上がります。脳疾患の検出には極めて有用な手法です。

■水に隠れた病変を見つけ出す『FLAIR(フレア)』


■【少し応用編】超急性期脳梗塞とFLAIR ~ Intra Arterial Sign ~
一分一秒を争う脳梗塞の「超急性期」において、FLAIRには重要なサインが隠れています。それが「Intra-arterial sign(イントラアーテリアルサイン/血管内高信号)」です。
正常な太い血管は、血液が勢いよく流れているためFLAIR画像では信号を拾えず「黒い管」として抜けて見えます。しかし、血栓などで血管が詰まり血流が滞ると、FLAIR画像上で本来黒いはずの血管が「白いドット(点)」や「白い線」として浮かび上がってきます。これは非常に重要なサインなのです!



なぜこのサインが重要なのか?
脳細胞が完全にダメージを受ける前に、「今まさにここの血管が詰まり、血流が落ちている!」という危機的状況をリアルタイムで把握できるからです。この血管からのSOSにいち早く気づくことができれば、カテーテルによる血栓回収療法や、t-PA投与(血栓溶解療法)の判断材料になり、患者さんを劇的に救う治療への強力な後押しとなります。
■FLAIRの価値
FLAIRは、ただ脳を写すだけの画像ではありません。
不要な信号を消して、病変を浮かび上がらせるというMRIらしさがよく出た撮像法です。
医師にとっては診断の助けとなり、放射線技師にとっては撮像条件やアーチファクトへの配慮が問われる、非常に奥深いシーケンスでもあります。
そして一般の方にとっても、「白い・黒い」にはきちんと意味があることがわかると、MRI画像の見え方が少し変わってくるかもしれません。
FLAIRは、脳脊髄液の信号を抑えて病変を見やすくするMRI画像です。異常の評価に有用で、超急性期脳梗塞ではIntra Arterial Signのような重要な所見が見られることもあります。
次にMRI画像を見る機会があれば、「これはT2かな?FLAIRかな?」「血管の中に白いサインはないかな?」と、ぜひ少し違った視点で観察してみてくださいね。画像の中に隠されたメッセージが見えてくるはずです。
次回も、MRIの不思議なコントラストの世界をさらに深掘りしていきます。
■新大阪画像のMoRI診断クリニックのMRI情報ブログ
~これからも「一味違う」画像を~
「ここで撮った画像は、なんだか見やすいね」
「想像していたよりも楽に検査できたよ」
そう言っていただけることが、非常に嬉しい瞬間です。
これからもスタッフ一同、自己研鑽を続け、患者さんや医師にとって価値ある画像を提供できるよう努力してまいります。
MRIの可能性はまだまだ広がっています。