子宮体癌 Uterine Cancer
- 2024年7月31日
- 女性骨盤部病変 (Female Pelvis)
みなさんこんにちは! ブログ担当技師です!
毎日暑い日が続きますが、体調には十分気を付けていきましょう!!
今回は検診をきっかけに気になる方も多いのではないでしょうか、婦人科領域の症例をご紹介いたします!
今回の患者様はもともと不正出血が続いていたが内診が苦手ということで、当院の子宮卵巣ドックを受診されました。
私も内診は苦手なのでお気持ちよく分かります。。。
当院の子宮・卵巣ドックは採血とMRIで行っており、MRIは検査着を着たまま装置のベッドに寝ていただくだけです。
服を脱いだり脚を広げたり痛みを伴ったりということがありませんので、内診が苦手な方には特におすすめです!
それでは解剖からご紹介しましょう!
上の画像は体を左右に分けた断面を左から見たものです。
子宮は骨盤の中にあり、膀胱の後ろ、直腸の前に位置します。
周りの臓器の動きによって、前後左右に傾いています。
下の画像は体を前後に分けた断面を前から見たものです。
子宮は胎児を成長させるための臓器なので中に空間(内腔)があり、分泌液などがあります。
そのため通常、下の画像(左)では内腔(青い線で囲った内側)は白く見えるのですが、今回の患者様の画像(右)では内腔が灰色になっていますね。
しかもなんだか内腔がギザギザボコボコ、いびつな形になっています。
画像の種類を変えてみるとどうでしょう。今度は正常(左)に比べて内腔が白っぽい(右)ですね。形もいびつです。
こちらの画像では、正常(左)に比べて内腔が黒っぽい(右)ですね。形もいびつです。
これらの画像所見などを踏まえて、子宮体癌疑いと診断されました。
子宮体癌とは子宮体部にできる癌のことを指します。
最近CMでよく聞く子宮頚癌は子宮頚部にできる癌のことを指します。
子宮体癌は食生活の欧米化に伴って日本人にも増えてきている癌の1つです。
ほとんどは子宮内膜という組織から発生するため子宮内膜癌とも呼ばれます。
子宮体癌の発生には女性ホルモン(エストロゲン、卵胞ホルモン)が深く関わっています。
(子宮頚癌はヒトパピローマウイルスが原因となります。)
卵胞ホルモンには子宮内膜の発育を促す作用があるので、卵胞ホルモンの値が高い方は子宮内膜増殖症という前段階を経て子宮体癌が発生しやすいことが知られています。
・出産したことがない
・肥満
・月経不順(無排卵性月経周期)がある
・卵胞ホルモン製剤だけのホルモン療法を受けている
などが危険因子とされます。
卵胞ホルモンに関係なく癌関連遺伝子の異常によって発生するとされる子宮体癌もあり、比較的高齢者に多くみられます。
・高血圧
・糖尿病
・近親者が乳癌・大腸癌を患った
なども危険因子とされます。
1番多い自覚症状は、今回の患者様と同じ不正出血です!
子宮体癌は子宮内膜にできる癌なので、月経の度に内膜が剥がれ落ちてしまえばリスクは少ないといえます。
しかし閉経後はホルモンバランスが崩れやすく、子宮内膜が増殖しやすくなります。
子宮頚癌に比べて子宮体癌になりやすいのは比較的高齢の方のため、閉経後あるいは更年期での不正出血がある時には特に注意が必要です!
閉経前であっても月経不順や乳癌の既往があればやはり注意が必要です。
治療の主体は手術です。病気の進行度にもよりますが基本的には子宮、卵巣・卵管、リンパ節を摘出するのが一般的です。現在は子宮体癌の腹腔鏡下手術やロボット手術が保険適応となっており、施設によっては条件が満たせばより低侵襲な手術も可能となっています。
自覚症状がないうちに早期発見のためにぜひ1度画像ドックを受けられてみてはいかがでしょうか。
それではまた次回!