大動脈解離 aortic dissection
- 2024年5月23日
- 血管病変(Vascular)
みなさんこんにちは!ブログ担当技師です!
暑い日も増えてきましたが急に肌寒い日もあり、体調管理には十分気をつけていきたいですね!
今回は私たちも見つけたら緊張するような症例をご紹介します!
個人で当院受診の予約をとられた患者様の症例で、1年ほど前より腹痛が続いており
今回来院されました。
腹痛や背部痛といった症状は大動脈解離や急性膵炎など色々な原因が考えられます。
今回は広い範囲で原因を探すため胸腹部でのCT検査となりました。
CT検査はMRI検査より遥かに短い時間で広範囲検査が出来ます。
主に胸部領域と腹部領域を精査していきます。
【胸部から腹部の血管解剖について】
大動脈とは、心臓から出された血液を体中に送るための太い血管です。
胸部から腹部にかけて走行しています。
大動脈から体中に血管が枝分かれ、いろんな臓器や筋肉など全身に血液が送られていくのでとても重要な血管です。
【正常CTとの比較】
血管に注目してどうでしょうか?
大動脈解離とは簡単に言うと大動脈の動脈壁が破れた状態をいいます。
大動脈は、内膜、中膜、外膜の3層からなり特に中膜は内膜、外膜と比べてやや脆い傾向にあります。
原因としては 動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、高脂血症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、遺伝などのさまざまな要因が関係すると考えられており、
大動脈解離の発症が多い年齢は男女とも70代~80代とされていますが、40代や50代で発症することも少なくありません。
上記の様な原因により血管壁に負荷がかかった結果、内膜、中膜の間で大動脈が裂けることがあります。
この大動脈壁が二層に剥離し大動脈腔が2腔になっている状態を大動脈解離と言います。
大動脈解離には分類によって緊急性が異なります!
※2020年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインを引用しています。
■発症からの病期 ■解離の範囲 ■偽腔の血流状態からの分類 |
■発症からの病期
解離発症から2週間以内を急性期
解離発症から3か月以内を亜急性期
それ以降を慢性期と定義されており、ここまで時間が経つと動脈瘤化します。
急性期、亜急性期にはステントグラフト内挿術が推奨されています。
慢性期でも動脈瘤の破裂防止のため外科的な治療が施行されることもあります。
ステントグラフト内挿術とはどういったものか?
大動脈瘤に対してカテーテルという医療用のワイヤーを血管内へ挿入し血管内から治療を行うことを指します。
大動脈解離では、主な合併症に大動脈破裂、大動脈から分岐する動脈の閉塞があります。どちらも放置すると破裂する危険性があります。
いずれにしても大動脈の破裂や動脈閉塞をくい止める事が目的になります。
■解離の範囲(Stanford分類とDeBakey分類)
それぞれ読み方はスタンフォード、ドゥベーキーと言います。
Stanford分類は、entry(内膜の裂け目)の位置に関わらず解離が上行大動脈に及んでいるか否かで分けられます。
- StanfordA型(上行大動脈まで解離が及んでいる)
- StanfordB型(上行大動脈まで解離が及んでいない)
StanfordA型の場合、特に緊急性が高く、
救急の現場ではこちらの分類が使用されることが多いです。
基本的に緊急手術の適応となり、人工血管留置術
(血管を人工血管に置き換える手術)が行われます。
StanfordB型の場合、保存的療法や臓器への血流の維持や大動脈の拡大予防を目的とした
ステントグラフト内挿術が適応となる場合があります。
もう1つDeBakey分類は、 Stanford分類より少しややこしく解離の範囲と、entryの位置により分類します。
解離範囲を具体的に示したものであり、心臓血管外科が手術する場合や血管内治療の際に有用な分類とされます。
- DeBakeyⅠ型:上行大動脈から腹部大動脈まで及ぶ
- DeBakeyⅡ型:上行大動脈に限局している
ⅠとⅡは、 Stanford分類で言うとA型に相当し緊急性が高く外科的手術の適応となります。
- DeBakeyⅢ型:下行大動脈に限局している
- DeBakeyⅣ型:下行大動脈から腹部大動脈まで及ぶ
ⅢとⅣは、Stanford分類で言うとB型に相当し保存療法の適応となります。
■偽腔の血流状態からの分類
偽腔の血流状態から、偽腔に血流のあるものを偽腔開存型、
偽腔が血栓で閉塞したものを偽腔閉鎖型に分けられます。
特殊なタイプとして、偽腔閉鎖型解離において、血栓のある偽腔へ局所的な内腔の突出を認めることがありULP型と呼ばれます。
このULP型では他のタイプより再解離のリスクが高いとされています。
【まとめ】
大動脈解離は、命に関わる病気です
①胸や背中に裂けるような痛みがある
②痛みの場所が移動するような症状がある
③普段と違った痛みがある
④痛みがあるが薬の効果がない
など明らかな症状が認められる場合はこういった病気も疑い早急に医療機関へご受診下さい。
早期発見は重要です。ご自身の健康を守るために出来るだけ早い段階から行動を!
それではまた次回!