画像のMoRI診断クリニックLABO_画像のMoRIの世界へようこそ_MRIの音
- 2025年12月26日
- MRIに関する豆知識と検査のポイント,MRI,未分類
はじめに:画像のMoRIの世界へようこそ
こんにちは!画像のMoRI診断クリニックLABO担当技師です!このブログでは、MRI(磁気共鳴画像)に関するちょっとした豆知識や、画像に現れる不思議な現象について、可能な限りわかりやすくご紹介していきます。
今回はMRIの『音』について触れたいと思います。
MRIは「ドンドン、ガンガン、ビーッ!」——初めて体験した方は驚くほどの音に戸惑いますよね。実はこの“音”、機械の不調ではありません。
端的にいうと
MRIは、画像を作るために「勾配磁場コイル(グラジエントコイル)」を超高速でオン・オフします。強い磁場の中でコイルに電流を切り替えると力(ローレンツ力)が生まれ、コイルや本体が微妙に振動し、その振動音が「ドンドン」「ビーッ」として聞こえるのです。
なぜMRIはあんなに大きな音が出るの?
では、なぜMRIはあんなにも大きな音を出すのでしょうか?簡単にその仕組みをご紹介しましょう。
MRI装置の中には、強力な磁石(磁場)と、電気を流すための「コイル」が入っています。検査中、体の断面を撮影するために、このコイルにものすごい速さで『電気』が流されます。
すると、どうなるでしょう?
強力な磁場と、コイルに流れる電気の力が作用し合って、コイルが激しく振動を始めるんです。この振動こそが、皆さんが耳にする「ドンドン、ガンガン、ビーッ!」という音の正体なんです。例えるなら、電磁石が高速でオン・オフを繰り返すことで、機械自体が共鳴して音を出しているようなイメージですね。
検査の性質上、より鮮明な画像を撮るためには、どうしても大きな振動(=音)は避けられないのです。

「この音は何?」
もし患者さんからそう質問されたら。。。よく聞かれますので医療従事者の方々、ぜひこの豆知識を思い出してみてください。
「この音は機械が壊れているわけではなく、検査に必要な『磁石の力』と『電気の力』が合わさって、機械がブルブル震えている音なんです。ちゃんと検査ができている証拠ですから、ご安心くださいね。」
といったように、少し説明を加えてあげるだけで、患者さんの不安はぐっと和らぐはずです。もちろん、大きな音への対策として、耳栓やヘッドホンは必須アイテムですよね!
MRIの「うるさい音」どう減らす?【メリット】
最近は静音モードや静音シーケンスが広がり、この静音シーケンスは勾配磁場の切り替えを、まるで「ギアチェンジをなめらかにする」ように調整する技術。これにより、騒音を大幅に減らすことができるんです。各装置メーカーで静音技術は異なりますが、装置の構造上で物理的に騒音源を抑え込んだり、傾斜磁場のスイッチングを最適化したり、弱めることによって音を抑えています。
特により強力な磁場を使う3T(テスラ)のMRIは、装置のパワーも強く、通常の1.5T装置に比べて音が大きくなりがちなので、静音シーケンスが活躍する場面も多いでしょう。

MRIの「うるさい音」どう減らす?【デメリット】
これで魔法のように“すべての撮影を静音モードにすれば!?” “MRI音問題を解決!”ではありません。静音シーケンスによるメリット・デメリット、ここでもMRI特有の画質や撮像時間とのトレードオフを理解して、うまく使い分けるのが実務のコツです。
1. 検査時間が長くなる傾向に…
勾配の切り替えを「なめらか」にするということは、言い換えれば**「ゆっくり動かす」**ということ。そのため、標準の撮像方法と比べて、検査時間が延びてしまう傾向があります。検査中じっとしているのがつらくなり、途中で動いてしまうことで**「動きアーチファクト」**が出るリスクも増えることがあります。
2. 画質やコントラストに影響が出ることも…
軽度のブラー(ボケ):特に細かい部分を見る検査では、わずかに鮮鋭度が落ちてぼやけて見えることがあります。
コントラストの変化:病変の見え方が標準とは微妙に異なる場合があります。定量的な評価(特定の数値を測る場合など)には注意が必要です。
3. 対応できる検査の種類が限られる…
残念ながら、すべてのMRI検査で静音シーケンスが使えるわけではありません。
特にDWI(拡散強調画像)、Perfusion(灌流画像)、fMRI(機能的MRI)といった**「超高速EPI」**と呼ばれる種類の検査は、原理的に騒音が大きくなりがち。静音ソフトがあっても、標準と同じ画質や時間で撮るのが難しいケースも少なくありません。
MRIの「うるさい音」との付き合い方
実務的には、検査の目的と何を優先するか(快適性 vs 画質/時間)によって静音シーケンスを使い分けるのが賢明です。
「快適さ」を買う代わりに、「時間」「一部の解像・コントラスト」「適用範囲」で妥協が必要になる技術です。検査目的と優先順位を明確にして、要所で賢く使い分けるのが最適解ではないでしょうか?
静音を優先するケース
小児、閉所恐怖症・不安・過敏、高齢者、耳疾患、術後、長尺プロトコル 等
画質/時間を優先するケース
微細構造評価、定量比較が主目的、動きに弱い部位、スループット重視の施設 等
あとがき:これからも「一味違う」画像を
皆さまお楽しみいただけましたでしょうか?次回もMRIの豆知識や検査のポイントをどんどんお伝えできればと思います!
「ここで撮った画像は、なんだか見やすいね」そう言っていただけることが、非常に嬉しい瞬間です。
これからもスタッフ一同、自己研鑽を続け、患者さんや医師にとって価値ある画像を提供できるよう努力してまいります。
― MRIの可能性はまだまだ広がっています ―