動脈硬化 Arteriosclerosis
- 2024年2月2日
- 血管病変(Vascular)
あけましておめでとうございます!
ブログ担当技師です。
今年もたくさん勉強になる症例をアップしていきたいと思います!
2024年一症例目は誰もが一度は名前を聞いたことのある「動脈硬化」についてです。
動脈硬化と聞いて、なんとなく体によくないことだとは知っているけど、実際どのように「動脈」が「硬化」してなぜそれが体に異常をきたすかを知っている方は少ないのでは?
動脈の壁はもともとはゴムのようにやわらかく弾力性があるのですが、喫煙や加齢など、様々な理由により弾力性を失ってしまうと血流にのって流れている余分なものが壁にくっついてしまいます。ゴミがくっついたところ(プラークと呼びます)にまたゴミがひっかかり、だんだんプラークが大きくなっていろいろな病変を引き起こします。
プラークが引き起こす病変①【動脈血管の狭窄・閉塞】
まず一番有名なものとして、動脈硬化・プラーク形成による動脈の狭窄・閉塞、そこから引き起こされる各臓器や組織の「梗塞」があります。
血管が狭くなってくるともちろん中を通る血流も少なくなりますが、その血管が運ぶ酸素や栄養の供給を待っている組織にも影響が出ます。
プラークが血管内部をすべて埋め尽くしてしまい、その先に血液がいかなくなると酸素や栄養が運ばれず組織が死んでしまいます。
この現象が心臓の筋肉で起こると「心筋梗塞」、脳で起こると「脳梗塞」です。たくさん枝分かれした後の小さい血管が詰まるとその先にある組織も小さいため大事に至らないこともありますが、比較的大きい動脈が詰まるとその先のすべての血管とすべての組織に血液が供給されないので、死に至るような重篤な事態に陥ることもあります。
プラークが引き起こす病変②【プラーク破綻や血栓形成による遠位部の塞栓】
血管が詰まる、という点では①と同じですが、こちらの方がリスクも高く起きやすいために注意が必要です。
比較的大きな血管にできたプラークが一部崩れたり、そこで滞った血流からつくられた血栓(血のかたまり)が奥に流れていくことによって、遠位部(その血管より先=枝分かれしていった小さい血管)でそれが詰まり、その先の組織で梗塞(細胞に血液・酸素が流れず組織が死んでしまう)を引き起こします。
一番知られているのは頸動脈にできたプラークが飛ぶことによる脳梗塞で、食生活の欧米化や運動不足などにより近年発症率が増えてきています。
ここで今回の症例です。たまたま甲状腺をみるために首のエコーをした患者さんの画像に頸動脈が映りました。
なんと、断面の半分以上がプラークで埋まっているではありませんか!
上図のように、プラークがたまりに溜まって血管がとても狭くなっているんですね。
縦でみても血流が流れている部分(赤色に染まっている部分)は頸動脈内径の半分くらいしかないことがわかります。
もしこのまま放っておいたら、頸動脈が詰まってしまい脳に供給される血流が遮断されてしまったり、プラークの一部が砕けて脳に運ばれ、小さな血管に詰まり脳梗塞を起こす危険性があります。
基本的には投薬での治療が基本ですが、血管の中のプラークをごっそり掻き出して取り除いてしまう外科的な治療法もあります。
動脈硬化は人間の体のすべての部位に起こりうるため、いろいろな場所でさまざまな問題を引き起こす厄介な病気です。加齢によって血管が少しずつ硬くなってくるのは仕方のないことですが、現代人で動脈硬化のある人の多くが生活習慣病や喫煙、肥満などの問題を抱えているため、逆を言えば努力次第で動脈硬化の進行を防ぐことが可能です。
【動脈硬化を防ぐためには】
動脈硬化を防ぐには日々の生活の中に潜んでいる原因を取り除くことです!
たとえば高血圧をお持ちの方は薬をのんで血圧をコントロールしたり、血圧を上げないような食事を心がけることが大事です。
コレステロールもプラークの大きな原因となるので、コレステロールを多く含む食事を避けたり、血中にコレステロールが溜まらないよう適度に運動したり、健診で高コレステロールと診断された方はお薬を飲むなど、とにかく体の中からコレステロールを排除することが必要です。
また喫煙も動脈硬化の大きな要因です。心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクを下げたい方は禁煙されることを強くお勧めします。
知らない間に動脈硬化がすすんで合併症等を引き起こすと治療がより高度かつ複雑になり、お金もかかってきますので、早い段階で生活習慣の改善や薬の服用を行っていきましょう!
【動脈硬化を調べるには?】
今の段階でどれくらい動脈硬化があるか知りたい方は、ぜひ当院の「頸動脈ドック」を受けられることをおすすめします!
頸動脈ドックでは頸動脈エコーとMRIの両方の検査を行い、プラークの有無や性状、梗塞のリスクなどを調べます。
コレステロール値などを調べるための採血も行いますので、全ての結果を総合してこれからどうしていけば良いかについて的確なアドバイスが可能です。
ご質問等あればお気軽に当院06-6990-6070までお電話ください!技師や看護師からの回答も可能です。
ではまた次回!